摂食障害

医師や専門家が深く詳しく解説します

摂食障害

医師や専門家が深く詳しく解説します

摂食障害とは どんな病気? 拒食と過食、症状など詳しく解説

公開日
更新日

 
執筆:山本 恵一(メンタルヘルスライター)
 
医療監修:株式会社 とらうべ
 
 

摂食障害とは どういう障害なのでしょうか。
 
テレビや雑誌などで「ダイエット特集」が取り上げられることがよくありますが、過激なダイエットがきっかけで、摂食障害に陥ってしまうこともあります。
 
この記事では、摂食障害について詳しく説明します。
 
 

摂食障害とは どんな病気なの?

 

摂食障害とは、精神的なものが原因となって異常をきたす重篤な食行動の障害のことを言います。
臨床の現場でよく用いられる、アメリカ精神医学会が発行している『DSM-5:精神疾患の分類と診断の手引き(最新版)』では、摂食障害にはいくつかの分類がありますが、その中で、「神経性無食欲症」と「神経性大食症」は、摂食障害に含まれる病気の中でもっともよく知られている疾患です。
どのような病気なのか、それぞれ見ていきましょう。
 
 

神経性無食欲症(拒食症)とは:2つのタイプ

 

体重や体型が自己評価に大きな影響を与えるために、必要以上のカロリー制限を行ってしまい、正常な体重を下回る低体重(標準体重の80%以下)を引き起こす病気です。
いわゆる「拒食症」のことで、「神経性やせ症」「思春期やせ症」などと呼ばれることもあります。思春期やせ症とは、思春期の子供に生じる摂食障害を指します。思春期やせ症は、女子に多くみられ、小学校高学年から生じ、中学生になると患者数が増加する傾向があります。学業やクラブ活動において経験した挫折感、進路、人間関係に関する悩み等から逃避が摂食障害として現れます。思春期やせ症には、以下のような特徴がある子供がなりやすいと考えられています。
・真面目だが柔軟性に乏しい
・手のかからない所謂「良い子」タイプ
・自己評価が低い
・他人に頼ることなく自分で問題を解決しようと抱え込む
・他者からの評価に敏感
・完璧を求めるあまり、ストレスを感じやすい

 

神経性無食欲症(拒食症)には、自己の身体像(ボディーイメージ)の障害という側面もあります。
自己の身体像(ボディーイメージ)の障害とは、すでに体重が減っているにもかかわらず、体重が増えること太るやことに対して強い恐怖心を抱き、体重が増えないよう、さらにカロリー制限や過激な運動をするといった行動を続けるという特徴を持っています。患者の多くは、自己の身体像に敏感な10代の女性です。

 

拒食症は、「食べないこと」を徹底的に貫く「摂食制限型」、むちゃ食いと呼ばれる過食と、それによって体重が増えないように行う不適切な排出行動(自ら嘔吐する、緩下剤を乱用するなど)を繰り返す「過食・排出型」の2つに大別されます。

 
 

神経性大食症とは

 

いわゆる「過食症」のことで、「神経性過食症」とも呼ばれています。

 

「神経性大食症」は、過食とそれによる体重増加を防ぐための不適切な代償行動をくり返す病気です。
「神経性無食欲症」と同じように、体重や体型が自己評価に大きな影響を与えてしまっていること、そして、自己の身体像の障害があることが原因で発症します。また、神経性無食欲症から移行して発症するケースも少なくなく、20代の女性に多いとされています。

 

過食と排出行動をくり返すという点で、神経性無食欲症の「過食・排出型」と似ていますが、違っているのは低体重を引き起こさないことです。

 

このほか、「DSM-5」では、代償行動としての排出行動が伴わない場合は、「過食性障害」として別に分類されています。
排出行動がないため、過食によって体重は徐々に増加していきます。そのため、周囲からは比較的気づかれやすいと言われています。

 
また、「DSM-5」が分類するどの疾患の診断基準も満たさない場合、「特定不能の摂食障害」と診断される場合もあります。
 
 

摂食障害の原因

 
摂食障害は何が原因で起こるのでしょうか?
摂食障害は、「社会文化的要因」「家族環境」「個人的要因」という3つの準備因子に、「自我同一性の葛藤」「ストレス」「思春期の身体的変化」などの誘因因子が加わることによって、発症すると考えられています。

 

3つの準備因子について、以下で詳しくみていきましょう。
 
 

社会的要因

近年の摂食患者数の増加の背景に大きく関与しているとされているのが、「やせること=良いこと」という社会の風潮です。
 

「やせること=美しい」という風潮は、1960年代のアメリカで広まり、その後、日本もその影響を大きく受けました。
テレビや雑誌ではスリムなタレントがたくさん登場し、ファッション雑誌などでも、1年を通して『ダイエット特集』が組まれています。女性たちの体重に対する認識は、このような「やせること=美しい」という社会風潮によって大きく変化したのです。

 

厚生労働省が行った調査によると、「標準体重だけれども、自分は太ってると思う」という女性はおよそ70%います。
さらに、「痩せ」に該当していている女性でも、「ダイエットしたい」と考える人は40%を超えています。摂食障害患者の多くも、このダイエットをきっかけに発症しています。
 
 

個人的要因

これまでの研究で、自己評価や自尊心が低かったり、完璧主義、強迫傾向など神経症的傾向が強かったりする性格の人は、摂食障害になりやすいとされています。完璧主義であるがために、ダイエットという目標を掲げたときにも、「達成できたか、できていないか」「完全か、不完全か」という両極端な尺度で自分を評価しようとする傾向があるからです。

 
このような性格傾向の他にも、認知の偏りやストレス対処能力(ストレス・コーピングスキル)の低さなども指摘されています。「認知の偏り」とは、非合理的な思考のパターンで、抑うつや不安等と関連していることがあります。「認知の偏り」のパターンとして、思い込みや決めつけ、白か黒というような極端な思考、~するべきと考えがち、悪いことの原因を全て自分に求め責める、相手の気持ちを深読みし主観的な根拠で決めつける、悲観的な予測を立てる等があります。
 
ストレスコーピングとは、ストレスが生じたときに対処する方法で、ストレスの源である環境、人に対して、ダイレクトに働きかけ、解決を図る、ストレスそのものに対する認識を変えることにより対処する等の方法があります。
 

家族環境

家族環境と摂食障害の関連性については、一方で、家族との関係や家庭環境(両親の不和)などが強く影響を及ぼしているという指摘があります。
またもう一方では、「家族関係が摂食障害の発症因子であるという科学的な根拠は示されていない」という指摘もあり、現在もさまざまな議論があります。
 

 
このような準備因子に、誘因因子が加わることで発症すると考えられている摂食障害ですが、その他にも、神経性無食欲症も神経性大食症も遺伝的な要因との関連が指摘されています。
それぞれに関連する遺伝子は異なるものの、神経性無食欲症から神経性大食症を発症するケースもあることから、それぞれのもととなる遺伝子が何らかの関連があるのではないか、とも考えられています。

 
 

摂食障害の症状

 
摂食障害になると、カラダとココロの両方に症状が現れます。
また、それに伴い行動面にも問題を生じる「行動異常」と呼ばれる症状が現れます。行動異常には、摂食行動異常、排出行動異常、活動性(動性)の異常、問題行動異常などがあります。夫々の症状について以下で説明します。

 

<身体症状>
摂食障害のなかでも、とくに神経性無食欲症は、必要以上のカロリー制限を行い、低体重、低栄養状態に陥るため、全身に症状が現れ、最悪のケースでは死に至ることもあります。
 
神経性無食欲症(拒食症)による身体症状例としては、徐、浮腫、低体温、低血圧、無月経とそれによる骨粗しょう症、運動障害、意識障害、産毛の密生などがあります。

 

また、神経性大食症(過食症)では、次のような症状が現れます。
 
月経異常、唾液線腫脹、歯・エナメル質の溶解、食道の炎症、吐血、電解質異常(カリウム、ナトリウム)、不整脈など。

 
※これらの多くは過食と不適切な排出行動によるもののため、神経性無食欲症の「過食・排出型」でも、同じような症状が現れます。

 

<精神症状>
摂食障害によって引き起こされる精神症状としては、抑うつ、不安、易気分変動性(気分が変わりやすい)、衝動性などがあります。

 

<行動異常>

摂食障害によって引き起こされる行動異常の例としては、拒食、過食、盗み食いなどの摂食行動異常、嘔吐や緩下剤・利尿薬の使用などの排出行動異常、過活動(神経性無食欲症の場合)、自傷行為、自殺企図、薬物乱用、万引きなどがあります。

 

摂食障害の治療

摂食障害の治療において、まず優先されるのが、身体的な症状へのアプローチです。
とくに神経性無食欲症では、かなり危険な状態に陥っていることもありますので、薬物療法などを行い症状の回復を目指します。

 

栄養状態が良くない患者に対しては、栄養療法が行われます。その中で、徐々に食事が摂れるよう、栄養指導も行っていきます。このような治療は、外来治療で行うことも可能ですが、患者の状態によって入院治療になることもあります。
 
加えて、摂食障害を根本的に解決するためには、発症のきっかけとなった精神的な問題を解決しなければなりません。
そのために行われるのが、カウンセリングや認知行動療法などの精神療法です。これらの精神療法では、患者の認知の歪みに焦点を当て、食行動の異常をもたらす思考・行動パターンを是正していきます。認知行動療法とは、前述した「認知の偏り(歪み)」(物事の受け取り方や見方にある歪み)を柔軟でバランスのよいものに変えていくことにより、ストレスを軽減しようとする精神療法です。

 

また、対人関係上のストレスが食行動の異常をもたらしている場合には、対人関係療法を行い、ストレス対処能力をつけるためにトレーニングしていきます。

 

ただし、こうした治療も、「体重や体型=自己評価」である患者にとって、強い精神的苦痛を伴う場合もあります。
そのため、治療者と患者や家族の信頼関係がきちんと築かれ、「健康な体重になることが自己評価を下げることではない」と患者に理解させることが、回復を目指すうえでの重要なポイントなのです。

 
 

摂食障害:まとめ

 
以下が、摂食障害のまとめです。
・精神的な問題によって、食行動に異常をきたす病気であり、代表的な疾患には、神経性無食欲症、神経性大食症がある。どちらの疾患も、自己評価と体重・体型が強く結びついている、という特徴を持っている。
・神経性無食欲症には、拒食によって低体重を引き起こす「摂食制限型」と過食と排出行動を繰り返しながら低体重になる「過食・排出型」がある。
・神経性大食症は、過食と排出行動を繰り返すが、低体重を伴わない。
・症状には、身体症状、精神症状、行動異常がある。
・治療は、症状に応じて薬物療法や栄養療法が行われるが、これと共に発症のきっかけとなった心理的な問題を解決することが必要なため精神療法が用いられる。
 
 
<参考>
森千鶴、小原美津希「思春期女子のボディーイメージと摂食障害の関連」
http://www.lib.yamanashi.ac.jp/igaku/mokuji/YNJ/YNJ2-1/image/YNJ2-1-049to054.pdf

 
 
<執筆者プロフィール>
山本恵一(やまもと・よしかず)
メンタルヘルスライター。立教大学大学院卒、元東京国際大学心理学教授。保健・衛生コンサルタントや妊娠・育児コンサルタント、企業・医療機関向けヘルスケアサービスなどを提供する株式会社とらうべ副社長

 
 
<監修者プロフィール>
株式会社とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供
 
 

オススメリンク

 
関連した情報として以下のものがあります。ご参考にしてください。
 
「過食嘔吐の原因 : 過食嘔吐の症状は何が原因なの?」
 
過食症とは どんな病気? 過食嘔吐を繰り返す過食症の実態について解説!
 
過食性障害 の症状とは 『やけ食い』とはどう違う?
 
摂食障害の治療 は何をすれば良いの?どうすれば克服できる?
 
摂食障害について医師が解説した動画
 

 
「PTSD とはどんな病気?PTSDの治療法や予防法は、どのようにすればいいの?」
 
「イライラを抑える にはどうしたらいい?イライラへの対処法をご紹介」
 
統合失調症の症状について解説
 

※なお記事中の語句に張られたリンクをクリックすると、当該語句について詳しく説明した当サイト内もしくは外部サイトの記事へ移動しますので、ご活用いただければ幸いです。